薬剤師免許を持っていても、薬剤師として働いた経験がなければ、入職後に何から教わるのか、どのように担当できる業務が増えていくのかは想像しにくいと思います。
私がパート薬剤師として働き始めた当初は、薬剤師の実務を基礎から覚えていく必要がありました。
最初から監査や服薬指導まですべてを任されたわけではありません。
まずは調剤の基本的な流れを覚え、その後、監査、服薬指導、薬歴の記載、疑義照会へと、少しずつ担当する範囲が広がっていきました。
実際に働いてみると、薬の知識だけでなく、医薬品の名称と外見を一致させること、複数の業務を切り替えながら正確に進めることなどにも難しさがありました。
一方で、分からないことを質問できる環境や、教わった内容をメモして整理する習慣は、仕事を覚えるうえで大きな助けになりました。
この記事では、私の経験をもとに、仕事を覚えた順序、難しいと感じたこと、役立った支援や工夫、一通りの業務ができるようになるまでの期間について紹介します。
教わる順序や任される時期は勤務先によって異なります。
私の経験が、これから薬剤師として働き始める方にとって、入職後の流れを想像するための参考になれば幸いです。
実務未経験から仕事を覚えた順序
最初は調剤の基本的な流れから覚えた
私が薬剤師として働き始めたとき、最初に教わったのは調剤でした。
私の勤務先では、処方箋の内容を確認してパソコンに入力し、処方箋の指示に従って薬を取りそろえ、監査へ回すまでの一連の流れを覚えました。
PTPシートのまま渡す場合は、必要な薬を棚から取りそろえました。
一包化する場合は、薬を取りそろえて分包機を使いました。
患者さんの年齢や体調などを踏まえて一包化の希望を確認することもあり、その場合は処方医へ確認したうえで対応しました。
この基本的な流れを先に覚え、散剤や水剤など、剤形によって手順が変わる処方については、実際の業務をする中で少しずつ覚えていきました。
初日からすべての業務を担当したわけではありません。
調剤を安定して行えるようになるまでは、監査や服薬指導を担当せず、処方箋の内容を入力して薬を取りそろえ、監査へ回すところまでを繰り返しました。
監査から服薬指導・薬歴へ進んだ
調剤の基本的な流れを安定して行えるようになった後、次に教わったのは監査でした。
私の勤務先では、患者さんがその場で薬を待っている処方のほかに、あとで受け取りに来る予定の処方もありました。
後者は比較的時間に余裕があったため、私はまず、そうした処方を対象に、やり方を教わりながら監査を行いました。
最初のうちは、私が監査した後にほかの薬剤師にも確認してもらいました。
正確さを保ちながら、ある程度の速さで監査できるようになったと判断されてからは、その場で薬を待っている患者さんの処方についても監査するようになりました。
服薬指導は、この段階で教わりました。
最初は私が監査を行い、その後にほかの薬剤師が服薬指導する様子を見学しました。
見学後には、その患者さんへの服薬指導で確認することや、説明するときのポイントを教えてもらいました。
その後は、監査から服薬指導までを自分で担当するようになりました。
服薬指導では、薬の説明をするだけでなく、服薬状況、残薬、体調の変化などを確認し、説明した内容とともに薬歴へ記録しました。
副作用歴やアレルギー歴など、安全に薬を使用するために必要な情報も確認して記録します。
処方箋の内容をパソコンに入力する作業と、薬歴を記載する作業は別のものです。
処方箋の入力は、今回処方された薬の内容を調剤に反映するための作業です。
一方、薬歴には患者さんの服薬状況や体調、確認したこと、説明したことなどを残し、次回以降の調剤や服薬指導に役立てます。
私の場合は、調剤、監査、服薬指導、薬歴記載という順に担当する範囲が広がり、一連の業務が少しずつつながっていきました。
疑義照会はほかの薬剤師の支援を受けながら行った
監査や服薬指導を担当するようになってから、患者さんに薬の日数を変更してほしいと相談されたことがありました。
処方内容の変更に関わる相談だったため、まずはほかの薬剤師に相談しました。
その結果、処方医への確認が必要だと判断し、医療機関へ問い合わせることになりました。
内容としては比較的簡単なものでしたが、問い合わせの前後を含めた一連の対応を、ほかの薬剤師に支援してもらいながら自分で行いました。
問い合わせる前には、患者さんの希望と処方内容を整理し、医療機関へどのように伝えるかを確認してもらいました。
通話中も、ほかの薬剤師に近くで通話内容を聞いてもらい、医療機関から受けた回答に問題がないかをすぐに確認してもらえるようにしていました。
通話後は、回答に基づく処方内容の変更や記録の方法まで確認してもらいました。
疑義照会では、医療機関へ電話をかけることだけでなく、問い合わせる内容を整理し、回答を正確に受け取り、その結果を処方や記録へ反映するところまでが一連の業務になります。
最初からすべてを一人で任されたのではなく、各段階で確認してもらいながら一通りの工程を経験できたことで、その後の対応をイメージしやすくなりました。
薬についての質問にすぐ答えられないときの対応
患者さんから薬についての質問を受け、自分の知識だけではすぐに答えられないときは、まず電子添文を確認しました。
電子添文だけでは必要な情報が分からない場合は、電子添文を補完する資料であるインタビューフォーム(以下、IF)を確認しました。
質問への答えが明確に記載され、内容を理解できる場合は、その記載に基づいて説明しました。
資料に書かれている内容の解釈が難しい場合や、その内容を患者さんの状況に当てはめてよいか、どのように説明すればよいか判断できない場合は、ほかの薬剤師に相談してから回答しました。
電子添文やIFでも分からない場合は、インターネットで追加の情報を探しました。
ただし、検索結果に表示された情報をそのまま患者さんへ伝えるのではなく、PMDA、行政機関、医薬品の製造販売業者、学会など、発信元と根拠を確認できる情報を優先しました。
インターネットで調べた場合は必ずほかの薬剤師に相談し、助言に従って別の資料を探し直すか、確認した情報をもとに患者さんへ回答しました。
私が受けた大学の授業や実務実習では、医薬品の基本的な情報を調べるときは、まず電子添文を確認し、より詳しい情報が必要な場合はIFで補う方法を学びました。
また、働き始める前には、医療機関で働く知り合いの薬剤師から、患者さんやほかの医療関係者から受ける問い合わせの多くは、まずこの二つを確認することで対応できると聞いていました。
そのため、働き始めた時点で、最初に電子添文とIFを調べることは分かっていました。
そこで答えが見つからない場合や、記載内容を自分だけでは解釈できない場合は、診療ガイドラインや文献など、ほかの情報源を探したり、同僚の薬剤師へ相談したりしていました。
この流れをスムーズに行うためには、日頃から電子添文とIFを読み、それぞれにどのような情報が、どの項目に記載されているのかを大まかに把握しておく必要があると感じました。
すべての医薬品情報を暗記するのではなく、必要な情報をどこで調べ、自分だけで判断できない場合は誰へ相談するのかを知っておくことが、実際の患者対応につながります。
薬剤師の実務で難しかったこと
実務を覚える過程で、特に難しいと感じたのは、医薬品の名称と外見を一致させることと、複数の業務を切り替えながら正確さと速さを保つことでした。
医薬品の名称と外見を一致させる
錠剤の本体には、医薬品の名称が印字されているものもあれば、アルファベットや数字などで構成された識別コードだけが刻印されているものもあります。
識別コードには、医薬品の名称から直接連想しにくいものもありました。
そのため、私はコードと医薬品の名称を結びつける語呂合わせを自分で考え、調剤を繰り返しながら覚えていきました。
医薬品の場所だけでなく、錠剤の色や形、印字や刻印まで一致させるには時間がかかりましたが、繰り返し扱ううちに少しずつ見分けられるようになりました。
一方、近年は印刷技術の向上や医薬品の取り違えを防ぐ取り組みにより、錠剤やカプセルの本体に、製品名、成分名、含量などを直接表示する製剤も増えています。
すべての製剤に名称が表示されているわけではなく、識別コードから覚える必要があるものも残っています。
それでも、名称が直接表示された製剤では、医薬品の名称と外見を結びつける負担が以前より小さくなっています。
業務を切り替えながら正確さと速さを保つ
もう一つ難しかったのは、優先順位の変化に応じて業務を切り替えながら、正確さと速さを保つことでした。
一つの業務を行っている途中でも、別の業務を先に行う必要が生じることがあります。
その場合は、後回しにした業務を忘れず、適切なところから再開しなければなりません。
一つ一つの作業に時間がかかるうちは、後回しになった業務が積み重なり、さらに追い込まれやすくなります。
働き始めた頃は、ほかの薬剤師が複数の業務を切り替えながら混乱せずに進めていることが不思議でした。
実際に働き続けるうちに、まず一つ一つの業務を正確かつ一定の速さで行えるようになり、その後、優先順位に応じて切り替えられるようになっていきました。
ただし、患者さんに影響する可能性がある確認まで、速さを優先するわけではありません。
間違いが起きやすい部分では、意識して作業速度を落とすことも必要でした。
急いだ結果、間違いに気づいて作業をやり直すことになれば、そのほうが大きな時間の損失になります。
正確さを保つことが、結果として業務を速く進めることにもつながると分かりました。
作業を中断したときに、忘れず再開するための工夫
患者対応などで業務の優先順位が変わり、作業を途中で中断しなければならないこともありました。
私は、可能であれば切りのよいところまで進めてから中断しました。
途中で離れる場合は、再開したときに迷わないよう、どこまで終わっていて、次に何をするのかをメモ用紙に残しました。
また、緊急性の低い業務を担当している職員がいて、その人の担当範囲内で分担できる仕事があれば、対応を依頼しました。
一つの作業を終えた後には、途中になっている作業が残っていないか、手元や周囲を見て確認しました。
これは、メモを残した作業そのものを忘れていた場合にも、途中の作業に気づけるようにするためです。
作業の中断を完全に避けることはできません。
そのため、中断する位置を選ぶこと、再開地点をメモに残すこと、分担できる仕事は依頼すること、作業の区切りごとに取り残しがないか確認することを組み合わせていました。
仕事を覚えるうえで役立った支援と工夫
気軽に質問できることが最大の支えだった
私にとって最も大きなサポートは、分からないことを気軽に質問できる環境でした。
分からないことをその場で確認できれば、判断に迷った状態のまま業務を進めずに済みます。
安心して目の前の作業に集中でき、教えてもらった内容も実際の業務と結び付けて覚えられたため、仕事を覚えやすくなりました。
また、思い込みのまま作業を進めることを避けられたため、ミスを防ぐうえでも役立ちました。
実務未経験者にとっては、研修期間の長さや教材の有無だけでなく、日常業務の中で分からないことをためらわずに質問できることも、仕事を覚えるための重要な支えになると思います。
その場のメモと整理用ノートを使い分けた
仕事を教わり始めた頃は、ポケットサイズのメモ帳を持ち歩き、教わったことをその都度書き留めていました。
メモしたのは、調剤、監査、服薬指導などの作業手順、作業のコツ、注意する点、勤務先で採用している医薬品の名称などです。
患者さんの個人情報は書かず、職場の外へ持ち出しても問題のない範囲に限定していました。
仕事中のメモ帳には、きれいにまとめることよりも、教わった内容を忘れないうちに残すことを優先して、断片的に記録しました。
帰宅後は、そのメモを別のノートに整理しました。
後から読んでも手順や注意点が分かるように、断片的な内容を並べ直し、必要な説明を補いました。
ポケットサイズのメモ帳は、その場で情報を残すためのもの、整理用ノートは、後から確認できる形にまとめるためのものとして使い分けていました。
働き始めた頃は、勤務前日の夜に整理したノートを読み、翌日の作業を頭の中で順番にイメージしました。
職場でも、手順を確認したいときに整理用ノートを見返しました。
実際に業務をする中で、整理用ノートに加えた方がよいと感じたことがあれば、その都度書き足しました。
内容が増えて見づらくなったときは、もう一度整理して、ノートをまとめ直しました。
このようにノートを更新し、その内容を繰り返し確認するうちに、作業手順が自分の中に定着していきました。
現在では、ノートを開いて手順を確認することはほとんどありません。
ただし、勤務先によっては、業務に関するメモ自体を職場の外へ持ち出せない場合があります。
同じ方法を取り入れる場合は、患者さんを特定できる情報や外部への持ち出しが認められていない情報を記録せず、勤務先の規則に従う必要があります。
一通りの業務ができるようになるまで
一通りの業務がつながるまで半年から1年ほどかかった
私が「一通りできるようになった」と実感したのは、勤務先で日常的に扱う多くの処方箋について、処方内容の確認から服薬指導と薬歴の記載までを、大きく迷わず進められるようになった頃です。
処方内容を確認し、必要に応じて疑義照会を行う。
処方箋をパソコンに入力し、一包化やピッキングなどの調剤を行う。
監査では、正確さを保ちながら、患者さんを必要以上に待たせない速さで確認する。
こうした一連の業務をスムーズに行えることが、一つの目安になりました。
服薬指導では、患者さんに確認する項目と説明する順序が自分の中で固まり、服薬状況、残薬、体調の変化など、薬歴の記載につながる情報を見落とさずに聞けるようになりました。
私の場合、ここまでできるようになったと感じるまでには、およそ半年から1年かかりました。
当時は勤務日数が限られていたため、同じ期間でも、勤務日数、扱う処方箋の内容や数、職場の教育方法によって、経験の積み方は異なると思います。
ただし、一通りできるようになった後も、初めて見る処方や判断に迷う内容まで、すべて一人で対応できるようになったわけではありません。
必要なときに情報を調べたり、ほかの薬剤師へ相談したりすることも含めて、日常業務を進められるようになった状態を、ここでは「一通りできる」と考えています。
一人薬剤師を担当したのは一通りの業務を覚えてから
私が一人薬剤師として働く時間帯を任されたのは、調剤、監査、服薬指導などの一連の業務を行えるようになってからでした。
中でも重要だったのは、監査を正確に行い、処方内容に疑問があれば、そのまま進めずに必要な確認へつなげられることです。
一人の時間帯に判断に迷った場合は、ほかの薬剤師へ電話で相談できました。現場には一人でも、相談先がまったくない状態ではありませんでした。
それでも、処方内容や薬の組み合わせが複雑な場合や、患者さんから判断の難しい相談・質問を受けた場合は、一人では負担が大きくなります。
確認や情報検索に時間がかかっても、その間に必要となる調剤、監査、ほかの患者さんへの対応を、現場で分担する薬剤師はいないためです。
当初は、初めて来局する患者さんへの対応を特に心配していました。初回は質問を受ける可能性が高いと考えていたからです。
ただし、判断の難しい相談や質問を受けるのは、初めて来局する患者さんに限りません。
来局が初めてかどうかよりも、処方内容や相談内容の複雑さによって、一人で対応する負担が変わると感じました。
求人票や面接だけで、実際の忙しさや対応の難しさまで見極めるのは難しいと思います。
何社もの職場へ細かな質問をして比較することも、現実的ではありません。
それでも、実務未経験の段階では、「入職後すぐに一人になる可能性があるか」「一人の時間帯に判断に迷った場合、誰へどのように相談できるか」の二点は確認する価値があります。
職場を完全に見抜くためではなく、入職直後から相談相手のいない状態で働くことを避けるための確認です。
パート薬剤師として働き始める前の自分に伝えたいこと
働き始める前に、個々の医薬品に関する細かな知識をすべて覚えようとしなくてもよいと思います。
勤務先でよく扱う医薬品の知識は、実際の処方に触れながら少しずつ覚えられます。
ただし、知らない医薬品や判断できない内容を、分からないまま扱ってよいという意味ではありません。
必要な情報を調べ、判断に迷った場合はほかの薬剤師へ確認することが前提です。
働く前の準備としては、調剤、監査、服薬指導へ進む全体の流れと、調剤の基本的な手順を簡単に知っておくほうが役立ちます。
基本となる流れが分かっていれば、それを土台にして、勤務先の機器や仕事の進め方を覚えやすくなります。
働き始めた後は、まず業務の基本的な手順をしっかり覚えます。
教わった内容はメモに残し、後から見直すことで、次に同じ作業をするときに迷いにくくなります。
薬剤師の実務では、手順の決まった作業を含め、複数の業務を続けて正確に行う必要があります。
細かなミスを必要以上に恐れると、かえって目の前の作業へ集中しにくくなることがあります。
薬局では、入力、調剤、監査と複数の工程を経ることで、患者さんへ薬を渡す前に誤りを見つけやすくする仕組みがあります。
ただし、すべての誤りを必ず防げるわけではありません。
ミスを恐れすぎないことは、確認を省略してよいという意味ではなく、分からないことや間違いに気づいたときに、そのまま進めず周囲へ伝えることが大切です。
最初は周りの薬剤師に助けてもらうことが多くても、仕事を覚えれば、今度は自分が周りを助ける側になります。
仕事を分担し、互いに確認し合うことは、お互い様だと思います。
最初から周囲と同じ速さで働こうとせず、まずは一つずつ理解しながら、ミスを減らすことを目標にすればよいと思います。
周囲の忙しさや視線を気にして焦るより、自分が今行うべき作業に集中することが、結果として正確さと速さの両方につながります。
関連記事
薬剤師免許があって実務未経験でも働ける?職場選びと応募前の確認点
実務未経験者が応募先を選ぶときの条件や、教育体制・人員配置の確認方法をまとめています。
