パート薬剤師と派遣薬剤師の違いを比較
| 比較項目 | パート薬剤師 | 派遣薬剤師 |
| 雇用の仕組み | 勤務先と直接、雇用契約を結ぶ | 派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で働く |
| 仕事の指示 | 勤務先から受ける | 派遣先から受ける |
| 雇用契約の期間 | 有期・無期のどちらもある | 有期・無期のどちらもある |
| 就業先の変化 | 雇用契約が続き、異動がなければ同じ職場で働き続けられる | 派遣契約の終了後などに就業先が変わることがある |
| 時給 | 派遣より低い求人が多い傾向 | パートより高い求人が多い傾向 |
| 社会保険 | 条件を満たせば勤務先で加入 | 条件を満たせば派遣会社で加入 |
| 年次有給休暇 | 勤務先から付与 | 派遣会社から付与 |
| 福利厚生 | 主に勤務先の制度を利用 | 主に派遣会社の制度を利用 |
表は、一般的な違いが分かるように簡潔にまとめたものです。
契約内容や勤務先によって異なる点と、例外のある制度については、ここから順番に補足します。
雇用主と仕事の指示を受ける相手が違う
パート薬剤師は、実際に働く薬局や病院などと直接、雇用契約を結びます。
給与の支払い、社会保険の手続き、年次有給休暇の付与などを行うのも、雇用主である勤務先です。
一方、派遣薬剤師の雇用主は、実際に働く派遣先ではなく派遣会社です。
給与や社会保険、年次有給休暇などは派遣会社が扱いますが、日々の仕事では派遣先から指示を受けます。
そのため、給与や契約などの相談は派遣会社、日々の業務に関する確認は派遣先と、内容によって相談相手が変わります。
パートにも派遣にも有期契約と無期契約がある
「パート」は、同じ勤務先で働く通常の労働者より、1週間の所定労働時間が短い働き方を指します。
契約期間を表す言葉ではないため、パートにも有期契約と無期契約があります。
派遣も同様に、派遣会社との雇用契約には有期と無期の両方があります。
さらに派遣では、派遣薬剤師と派遣会社が結ぶ「雇用契約」と、派遣会社と派遣先が結ぶ「派遣契約」を分けて考える必要があります。
派遣先との派遣契約が終了しても、派遣会社との雇用契約まで必ず終了するとは限りません。
反対に、直接雇用のパートでも、有期契約が更新されなければ同じ職場で働き続けることはできません。
雇用の安定性は、パートか派遣かという名称だけでなく、有期契約か無期契約か、更新の基準は何か、契約終了後にどのような扱いになるかまで確認して判断する必要があります。
パートと有期契約の違いは、厚生労働省「パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために」でも確認できます。
派遣の「3年ルール」は雇用契約の期限とは限らない
派遣では、同じ派遣労働者が同じ派遣先の同一組織単位で働ける期間は、原則として3年です。
派遣先の事業所が派遣労働者を受け入れられる期間にも原則3年の制限がありますが、所定の手続きを行えば延長できる場合があります。
また、派遣会社に無期雇用されている人や60歳以上の人など、期間制限の対象外になるケースもあります。
したがって、3年が経過すれば必ず派遣会社との雇用が終了するわけでも、すべての派遣薬剤師が必ず別の職場へ移るわけでもありません。
ただし、有期雇用の派遣薬剤師が同じ組織単位で働き続ける場合には、この期間制限が就業先や仕事内容の変化につながる可能性があります。
詳しい仕組みは、厚生労働省「労働者派遣を行う際の主なポイント」で確認できます。
時給は派遣薬剤師のほうが高い求人が多い
薬剤師求人では、パートより派遣のほうが高い時給が設定されている傾向があります。
一方で、時給は勤務地、勤務時間、必要な経験、募集の緊急性などによって大きく変わります。
公開されている平均時給も、集計対象や条件がそろっているとは限らないため、数字だけを単純に比較することはできません。
実際に求人を比べるときは、時給だけでなく、勤務時間、交通費、賞与や手当の有無、契約期間、派遣先との契約が終了した後の扱いまで確認したほうが、収入の見通しを立てやすくなります。
派遣薬剤師は即戦力を求められる求人が多い
派遣薬剤師は、急な欠員や一時的な人手不足を補うために募集されることがあります。
そのため、派遣先の設備や仕事の進め方を覚えながら、早い段階から業務を担える経験者を求める求人が多い傾向があります。
ただし、すべての派遣求人が経験者だけを対象にしているわけではありません。
未経験者やブランクのある人を受け入れる求人もあり、派遣会社が研修制度を用意している場合もあります。
反対に、パートであれば必ず時間をかけて教えてもらえるとも限りません。
応募前には、必要な経験年数だけでなく、勤務開始後に任される業務、研修の有無、一人で対応する場面があるかまで確認したほうが安心です。
派遣薬剤師が人手不足を補う即戦力として求められる傾向は、薬キャリエージェント「【初めての派遣薬剤師】高時給?福利厚生は?メリット・デメリットを解説」でも示されています。
社会保険と年次有給休暇はどちらにもある
パートと派遣のどちらも、条件を満たせば健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入できます。
違うのは加入先です。
パート薬剤師は勤務先、派遣薬剤師は雇用主である派遣会社で加入します。
加入できるかどうかは雇用形態の名称だけで決まるものではなく、所定労働時間や雇用期間、勤務先または派遣会社の規模などによって判断されます。
加入条件は改正されることがあるため、求人を探す時点の条件を日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」で確認する必要があります。
年次有給休暇も、パートと派遣のどちらにもあります。
原則として、雇い入れから6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤すると付与されます。
週の所定労働時間が30時間未満で、所定労働日数が週4日以下または年間216日以下の場合は、所定労働日数に応じて年次有給休暇が比例付与されます。
派遣薬剤師の場合は派遣会社から付与されます。
派遣先が変わっても同じ派遣会社との雇用が継続していれば、年次有給休暇の付与日数は派遣会社での継続勤務年数をもとに決まります。
この扱いは、厚生労働省の年次有給休暇に関するQ&Aでも確認できます。
福利厚生はパートなら勤務先、派遣なら主に派遣会社の制度を利用する
パート薬剤師は、基本的に直接雇用されている勤務先の福利厚生を利用します。
派遣薬剤師は、雇用主である派遣会社の福利厚生を利用するのが基本です。
ただし、派遣先の制度を何も利用できないわけではありません。
派遣先は、そこで働く通常の労働者が利用している食堂、休憩室、更衣室について、派遣労働者にも利用の機会を与える必要があります。
業務に必要な教育訓練についても、一定の条件のもとで派遣先に実施義務があります。
福利厚生の内容は会社によって異なるため、研修制度、健康診断、休暇制度など、自分が利用したい制度を個別に確認することが大切です。
派遣先に求められる対応は、厚生労働省・都道府県労働局「派遣労働者を受け入れる際に注意すべきポイント(同一労働同一賃金関係)」にまとめられています。
薬剤師は派遣で働ける場所に制限がある
薬剤師であれば、どの職場でも派遣として働けるわけではありません。
病院や診療所で行う調剤業務への派遣は、原則として禁止されています。
一方、薬局やドラッグストアでの勤務まで一律に禁止されているわけではありません。
病院や診療所でも、紹介予定派遣、産前産後休業・育児休業・介護休業を取得する職員の代替、へき地にある医療機関など、一定の条件に該当すれば派遣が認められる場合があります。
詳しい対象と例外は、鳥取労働局「労働者派遣事業関係資料集」で確認できます。
ここまでの違いをまとめると、パート薬剤師は勤務先との直接雇用、派遣薬剤師は派遣会社に雇用されて派遣先で働くことが基本です。
ただし、雇用の安定性や仕事の負担、休みの取りやすさまで、雇用形態だけで決まるわけではありません。
まずは、こうした雇用形態の基本的な違いを自分の希望条件と照らし合わせ、探す求人の範囲を絞ります。
そのうえで、選んだ雇用形態の個別求人について、契約期間、就業先が変わる可能性、求められる経験、時給以外の待遇まで確認する必要があります。
私が直接雇用のパートに絞った3つの理由
1 即戦力として働く自信がなかった
転職当時は薬剤師としての経験が少なく、派遣先で即戦力として働ける自信がありませんでした。
慣れない職場の設備やルールを覚えながら、早い段階から仕事を任されることを考えると、私には負担が大きいように思えました。
それよりも、同じ職場で働きながら一つずつ仕事を覚え、身につけたことを積み重ねていく方が、自分には合っていると考えました。
2 職場が変わるたびに仕事と人間関係へ適応する負担を避けたかった
同じ調剤業務でも、職場が変われば、使用する機器やシステム、医薬品の配置、仕事の進め方なども変わります。
新しい人間関係にも、その都度慣れなければなりません。
当時の私は、環境が変わるたびに仕事の進め方を覚え直し、人間関係を築き直すことが、大きなストレスになると考えました。
時給が高くても、就業先が変わる可能性を気にしながら働くより、同じ環境で仕事と人間関係に慣れていく方を優先したかったのです。
3 仕事以外に使う時間だけでなく、体力も残したかった
私が確保したかったのは、仕事以外の時間だけではありません。
副業や家事、家族と過ごす時間を実際に使うための体力も必要でした。
仕事以外の時間を確保できても、仕事で強く消耗してしまえば、帰宅後や休日に何もできなくなります。
派遣の高い時給は魅力でしたが、即戦力として働く負担や環境の変化によって消耗する可能性を考えると、私が望む生活には合わないように思えました。
そのため、時給の高さよりも、同じ環境で働き続けやすいことを優先し、求人を探す範囲を直接雇用のパートに絞りました。
これは、パートなら必ず仕事が楽で、派遣は大変だと考えたからではありません。
当時の経験と、自分がストレスを感じやすい部分を比べた結果、私にはパートの方が合うと判断したということです。
この判断によって実際に仕事のストレスを抑え、仕事以外の余白を確保できたのか、次は数年働いた現在から振り返ります。
パート薬剤師として数年働いて分かった3つのこと
1 同じ職場で働くほど、仕事と人間関係のストレスは減った
入職後は、簡単な仕事から丁寧に教えてもらえました。
そのため、薬剤師としての経験が少ない時期でも、仕事そのもののストレスを抑えながら覚えていくことができました。
同じ職場で働き続ければ、一度覚えた設備やルール、仕事の進め方を、その後も使い続けられます。
仕事に慣れるにつれてミスを指摘される機会が減り、周囲に気を配る余裕も生まれたため、人間関係も自然と良好になりました。
数年働いた現在は、仕事と人間関係のストレスをかなり抑えられていると思います。
2 パートでも仕事そのものが大幅に楽とは限らなかった
一方で、実際の仕事は想像していたより忙しいものでした。
私の職場では、パートも正社員と同じように、調剤、監査、服薬指導などを行います。
勤続年数が長くなるにつれて任される仕事も増え、薬剤師が私一人になる時間帯もありました。
ただ、外部との調整、スケジュール全体の把握、採用薬の変更などは、正社員が担当する決まりになっていました。
雇用形態がパートでも、忙しさや責任の重さは、職場の人員配置や任される業務によって変わります。
3 週3勤務では余白を確保できたが、収入との両立は難しかった
入職当初の週3勤務では、副業や家事、家族のために使う時間と体力を、想定どおり確保できました。
しかし、勤務日数が少ない分、収入や資産形成とのバランスには課題が残りました。
そのため、現在は週4勤務に増やしています。
週4勤務にして収入は増えましたが、仕事以外に使える時間と体力は週3勤務のときより少なくなりました。
現在は余白の不足を感じており、経済的な条件が整えば、週3勤務へ戻したいと考えています。
パートを選ぶだけで余白が生まれるのではなく、勤務日数や勤務時間をどこまで抑えられるかも重要だと分かりました。
総合すると、求人を探す範囲を直接雇用のパートに絞った判断には、現在も納得しています。
薬剤師としての経験を積んだ今でも、もう一度求人を探すなら、まずはパートに絞る可能性が高いと思います。
ただし、実際の応募先は、その時点の個別求人を自分の条件と照らして決めます。
派遣先が変わる可能性や契約に関する不確実さを考えると、私にとっては、時給の高さよりも同じ環境で働き続けやすいことの方が重要だからです。
この経験を踏まえ、次はパート薬剤師と派遣薬剤師が、それぞれどのような人に合いやすいかを整理します。
パート薬剤師と派遣薬剤師はどんな人に向いているか
ここまでの違いを踏まえると、パートと派遣は、それぞれ次のような人に向いていると考えられます。
パート薬剤師が向いている人
- 同じ職場で長く働き、仕事や人間関係に慣れていきたい
- 新しい環境へ何度も適応する負担を避けたい
- 一つの職場で、覚えた仕事を積み重ねていきたい
- 時給の高さより、就業先が変わりにくいことを重視したい
- 勤務先と直接、契約や働き方について相談したい
パートは勤務先に直接雇用されるため、契約が続き、異動がなければ同じ職場で働き続けられます。
新しい環境に慣れるまで強く消耗する人や、慣れた職場で仕事以外のための体力も残したい人には、パートが向いている可能性があります。
ただし、パートにも有期契約はあり、異動の可能性がある求人もあります。
仕事が必ず軽いとも限らないため、契約期間や異動の有無、任される業務まで確認する必要があります。
派遣薬剤師が向いている人
- 薬剤師としての経験があり、初めての職場でも早い段階から業務に対応できる
- 就業先や仕事の進め方が変わることに、比較的抵抗が少ない
- 同じ職場で働き続けることより、高い時給を重視したい
- 一定期間ごとに、働く場所や条件を見直したい
- 契約や待遇について、派遣会社に相談しながら働きたい
派遣は、これまでの経験を生かし、条件の合う派遣先で働きたい人に向いている可能性があります。
環境の変化への負担が小さく、新しい職場でも仕事の進め方を早くつかめる人であれば、高い時給を生かしやすくなります。
ただし、すべての派遣求人が高時給とは限らず、就業先の変更や契約終了後の扱いも求人によって異なります。
派遣を選ぶ場合は、時給だけでなく、求められる経験、契約期間、派遣先との契約が終了した後の扱いまで確認することが大切です。
向いている雇用形態は、優先したい条件で変わる
パートと派遣のどちらが合うかは、収入だけでは決まりません。
収入が少なくなることと、環境が変わるたびに仕事や人間関係へ適応することのうち、どちらをより大きな負担に感じるかは人によって異なります。
自分が残したい時間と体力、必要な収入、避けたい負担を整理し、パートと派遣の基本的な違いに照らすことで、まず探す雇用形態を絞りやすくなります。
ただし、雇用形態を絞っただけでは応募先は決まりません。
次は、希望条件をもとに雇用形態を絞り、個別求人を確認して応募先を決めるまでの考え方を整理します。
求人を探す前に、希望条件と優先順位を整理する
求人を探す前に、まず自分が働き方に求める条件を整理します。
必要な収入、勤務日数や勤務時間、仕事以外に残したい時間と体力、契約期間、就業先が変わる可能性、任される業務など、重視する条件は人によって異なります。
すべての条件を同じ重さで扱うと求人を絞りにくいため、「譲れない条件」と「できれば満たしたい条件」に分け、優先順位を決めます。
次の順序で考えると、応募先を決めやすくなります。
- 自分の希望条件と優先順位を決める
- 条件をパートと派遣の基本的な違いに照らし、探す雇用形態を絞る
- 選んだ雇用形態の個別求人を、自分の希望条件と照らして確認する
- 条件に合う求人を応募先として選ぶ
雇用形態による違いは、求人の範囲を大きく絞るための判断材料です。
ただし、同じパートでも、契約期間、異動の有無、勤務日数、業務量、研修体制などは求人ごとに異なります。
派遣も、派遣会社や派遣先によって、契約内容、求められる経験、派遣契約終了後の扱いなどが変わります。
そのため、雇用形態を絞ったあとに、個別求人が自分の条件に合うかを確認する必要があります。
私の場合は、同じ職場で働き続けやすいことと、仕事以外に使う体力を残すことを優先したため、まず直接雇用のパートに絞りました。
そのうえでパートの求人を見ていましたが、最終的には、知人から紹介された職場が自分の条件に合うと判断して応募しました。
条件に合う求人が見つからない場合は、優先順位の低い条件を見直したり、探す雇用形態を広げたりすることもできます。
雇用形態だけで応募先を決めるのではなく、「条件を決める→雇用形態を絞る→個別求人を確認する」という順番で考えると、望む働き方に近い応募先を探しやすくなります。
まとめ
パート薬剤師と派遣薬剤師の大きな違いは、雇用主と実際に働く場所の関係です。
パート薬剤師は勤務先と直接雇用契約を結び、派遣薬剤師は派遣会社と雇用契約を結んで派遣先で働きます。
派遣はパートより高い時給が設定された求人が多い傾向にありますが、派遣契約の終了後などに就業先が変わることがあります。
一方、パートは雇用契約が続き、異動がなければ同じ職場で働き続けられます。
ただし、パートにも有期契約はあり、派遣会社に無期雇用される派遣薬剤師もいます。
仕事の忙しさや責任の重さも、雇用形態だけでは決まりません。
私は、同じ職場で仕事と人間関係に慣れ、仕事以外に使う体力を残すことを優先して、直接雇用のパートに絞りました。
数年働いた現在もその判断には納得していますが、余白を確保するには、雇用形態だけでなく勤務日数や勤務時間も重要だと感じています。
求人を探すときは、最初に希望条件と優先順位を整理し、それをパートと派遣の基本的な違いに照らして雇用形態を絞ります。
そのあとで、個別求人の契約期間、勤務日数、任される業務、研修体制、時給以外の待遇などを確認します。
パートと派遣のどちらが優れているかではなく、自分が何に消耗し、仕事以外にどれだけの時間と体力を残したいかを基準に選ぶことが大切です。
