薬剤師免許は持っていても、実務経験がなかったり、長いブランクや離職経験があったりすると、いきなり週5日・1日8時間で働くことに不安を感じることがあります。
まずは週2日や短時間勤務から始めたいと思っても、その働き方でどのくらいの収入になるのかが分からなければ、求人を探すときの条件も決めにくいものです。
この記事では、薬剤師パートとして週2~5日、1日4・6・8時間働いた場合の額面月収と額面年収を、時給2,000円として試算します。
時給2,000円は、実務未経験者やブランクのある薬剤師の平均時給・保証額ではありません。
勤務日数と勤務時間による収入の違いを比較するための計算上の仮定です。
収入の大きさだけでなく、体力や仕事への不安、必要な生活費と照らし合わせながら、自分が始められそうな勤務量を考える目安としてご覧ください。
実務未経験・ブランク可の求人でも、提示時給には幅がある
薬剤師パートの時給は、地域や勤務先、仕事内容、勤務する時間帯などによって異なります。
実務経験の有無やブランクの長さが、提示条件に影響することもあります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、2025年の賃金構造基本統計調査をもとに、薬剤師の短時間労働者の時給を全国平均2,540円としています。
これは残業代や賞与を含まない金額です。
ただし、この2,540円は経験者を含む短時間労働者全体の平均です。
実務未経験者や、長いブランクがある人だけの平均時給ではありません。
また、統計上の「短時間労働者」は、一般の労働者よりも1日の所定労働時間が短い人、または週の所定労働日数が少ない人を指します。
求人票で「パート」と記載されている人すべてと、完全に一致する区分ではありません。
参考:
2026年9月16日時点で確認できた「未経験可」「経験不問」「ブランク可」などの公開求人には、次のような例がありました。
| 公開求人の例 | 提示時給 | 未経験・ブランクに関する記載 |
| 東京都・あすみ調剤薬局 | 1,800~2,100円 | 経験不問、未経験者への指導あり |
| 岐阜県・アイセイ薬局石原店 | 2,000~2,200円 | 未経験者も応募可能、ブランクは相談可能 |
| 広島県・福山友愛病院 | 2,000~2,500円 | 未経験可、ブランク可 |
| 大阪府・さやか薬局門真本町店 | 2,200~2,500円 | 経験不問、ブランク可 |
| 新潟県・メッツ嵐南 薬局 | 2,500~2,600円 | ブランク可、経験に合わせて先輩スタッフがサポート |
求人情報は確認時点のものであり、掲載終了や条件変更となる場合があります。
今回確認した求人の提示時給は1,800~2,600円でした。
ただし、これらは地域差や求人ごとの違いを見るために確認した例であり、全国の求人を無作為に調べた結果ではありません。
提示されている上限額が、実務未経験者にも適用されるとは限らない点にも注意が必要です。
そのため、実務未経験者やブランクのある薬剤師の時給を、一つの金額で示すことはできません。
次章からは全国平均を収入表に当てはめるのではなく、勤務日数と勤務時間による違いを比べるため、時給2,000円を計算上の仮定として使用します。
時給2,000円で月収・年収を試算する条件
ここからは、勤務日数と勤務時間によって収入がどのように変わるかを、時給2,000円として計算します。
前章で見たように、薬剤師パートの時給には幅があります。
時給2,000円は、実務未経験者やブランクのある薬剤師の平均時給・保証額ではなく、勤務量による違いを比べるための仮定です。
額面年収と額面月収は、次の式で計算します。
- 額面年収=時給×1日の実働時間×週の勤務日数×52週
- 額面月収=額面年収÷12か月
収入表では、1日の実働時間を4時間・6時間・8時間、週の勤務日数を2日・3日・4日・5日として試算します。
休憩時間は実働時間に含めません。
また、1年を52週として、毎週同じ勤務時間分の賃金が発生するものとし、次の項目は計算に含めていません。
- 欠勤や無給となる休日
- 残業
- 賞与
- 各種手当
- 交通費
月収は年収を12か月で割った平均額です。
実際の給与は、月ごとの勤務日数や勤務先の給与計算方法によって変わります。
いずれも税金や社会保険料などが差し引かれる前の額面収入です。
求人票などで想定時給が分かっている場合は、計算式の「時給」をその金額に置き換えることで、自分の条件でも試算できます。
週2~5日で働いた場合の月収・年収
時給2,000円で、週2~5日、1日4・6・8時間働いた場合の額面収入を試算すると、次のようになります。
1か月あたりの額面収入
| 週の勤務日数 | 1日4時間 | 1日6時間 | 1日8時間 |
| 週2日 | 約6万9,300円 | 10万4,000円 | 約13万8,700円 |
| 週3日 | 10万4,000円 | 15万6,000円 | 20万8,000円 |
| 週4日 | 約13万8,700円 | 20万8,000円 | 約27万7,300円 |
| 週5日 | 約17万3,300円 | 26万円 | 約34万6,700円 |
月収は、年間を通して同じ条件で働いた場合の額面年収を12か月で割り、100円未満を四捨五入した金額です。
1年間の額面収入
| 週の勤務日数 | 1日4時間 | 1日6時間 | 1日8時間 |
| 週2日 | 83万2,000円 | 124万8,000円 | 166万4,000円 |
| 週3日 | 124万8,000円 | 187万2,000円 | 249万6,000円 |
| 週4日 | 166万4,000円 | 249万6,000円 | 332万8,000円 |
| 週5日 | 208万円 | 312万円 | 416万円 |
この試算では、1週間の実働時間が同じであれば、勤務日数と1日あたりの時間が違っても収入は同じになります。
たとえば、週3日・1日8時間と、週4日・1日6時間は、どちらも週24時間です。
試算上の額面収入は、月20万8,000円、年249万6,000円となります。
同様に、週2日・1日8時間と、週4日・1日4時間は、どちらも週16時間で、額面月収は約13万8,700円、額面年収は166万4,000円です。
ただし、収入が同じでも、1日の勤務時間を長くする場合と、勤務日数を増やす場合では、体力面の負担や通勤回数、休める日の配置が異なります。
週5日・1日8時間の収入が最も大きいからといって、その働き方がすべての人に適しているわけではありません。
この表は収入の多さを競うためではなく、自分が始められそうな勤務量と、必要な収入のバランスを考えるための目安です。
希望する年収から勤務日数と勤務時間を逆算する
前章の表は、勤務条件から収入を見るだけでなく、希望する額面年収から必要な勤務量を考えるためにも使えます。
希望する額面年収が決まっている場合、1週間に必要な実働時間は、次の式で計算できます。
- 1週間に必要な実働時間=希望する額面年収÷想定時給÷52週
さらに、週に働きたい日数で割ると、1日あたりに必要な実働時間を求められます。
- 1日あたりに必要な実働時間=1週間に必要な実働時間÷週の勤務日数
たとえば、時給2,000円で額面年収250万円前後を目安にする場合、必要な勤務時間は週約24時間です。
週24時間の働き方には、週3日・1日8時間や、週4日・1日6時間などがあります。
試算上は、どちらも額面月収20万8,000円、額面年収249万6,000円です。
収入がほぼ同じでも、週3日・1日8時間と週4日・1日6時間では、1日の負担や通勤回数、休日の取り方が異なります。
長時間勤務への不安が強ければ1日を短くする方法があり、通勤の負担が大きければ勤務日数を少なくする方法もあります。
実務未経験や長いブランクがある場合は、希望年収に必要な勤務量と、現時点で始められそうな勤務量が一致しないこともあります。
求人の募集条件が合えば、少ない勤務量から始め、仕事や生活の負担を見ながら勤務時間を増やしていくことも選択肢になります。
まずは次の3点を分けて考えると、条件を整理しやすくなります。
- 生活のために、どの程度の収入が必要か
- 現時点で、週何日・1日何時間なら始められそうか
- 収入と勤務量に差がある場合、どちらをどの程度調整できるか
ここで計算しているのは、税金や社会保険料などが差し引かれる前の額面収入です。
実際に受け取れる金額を考えるときは、次章で説明する額面と手取りの違いも確認する必要があります。
額面収入と手取りは同じではない
ここまでの収入表で示した金額は、税金や保険料などが差し引かれる前の額面収入です。
実際に受け取る手取り額は、次のように考えます。
- 手取り額=総支給額-税金・社会保険料など
給与から差し引かれる可能性がある主な項目は、次のとおりです。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税
所得税は毎月の給与から源泉徴収され、年末調整などで精算されます。
住民税は原則として前年の所得をもとに計算されるため、働き始めた年と翌年以降で手取りが変わることもあります。
表のうち週20時間以上となる働き方では、勤務先の規模や雇用契約など、それぞれの加入要件を満たすと、健康保険・厚生年金保険や雇用保険の加入対象になります。
健康保険・厚生年金保険は、加入要件を満たす場合には加入する制度です。
加入すると保険料が給与から差し引かれる一方、医療保険の給付や将来の厚生年金などにも関わります。
実際の手取り額は、社会保険への加入状況、前年の所得、扶養状況、各種控除などによって異なります。
税法上の扶養と社会保険上の扶養も同じ制度ではありません。
さらに、求人によっては交通費や賞与、各種手当が加わることもあるため、前章の収入表だけで生活に必要な金額を満たせるかどうかを断定することはできません。
こうした個人差が大きいため、この記事では一律の手取り額は試算していません。
社会保険の加入条件と収入への影響については、パート薬剤師の社会保険を整理した「パート薬剤師は社会保険に入れる?加入条件と週3日・週24時間で加入した実例」で詳しく説明しています。
参考:
実務未経験・ブランクがある場合は、時給と教育環境を一緒に確認する
希望する勤務日数と勤務時間が決まったら、その条件に合う求人を探していきます。
ただし、収入面の条件が合っていても、実務未経験者やブランクのある人を受け入れていなければ、実際に働き始めることはできません。
求人票の「未経験可」「ブランク可」といった記載とあわせて、自分の経歴でも応募できるかを確認する必要があります。
また、「未経験可」と書かれていても、仕事を教わる環境まで保証されているわけではありません。
応募や面接の段階では、少なくとも次の点を確認しておくと、働き始めた後の状況を想像しやすくなります。
- 実務未経験やブランクがあることを伝えたうえで応募できるか
- 希望する勤務時間帯に、質問できる薬剤師がいるか
- 基本的な仕事を覚えるまで、どのような形で教わるのか
特に短時間勤務を希望する場合は、教育を担当する人と勤務時間が重なるかどうかも確認したいところです。
教育体制があっても、自分が働く時間帯に質問できる人がいなければ、想定していた環境とは異なる可能性があります。
一方で、時給の高さと教育環境の充実度が、必ずしも比例するとは限りません。
時給が高い求人だから教育を受けられない、時給が低い求人だから丁寧に教えてもらえる、と求人票だけで判断することもできません。
実務未経験でも応募できる求人の見方や、応募前に確認したい教育体制については、「薬剤師免許があって実務未経験でも働ける?職場選びと応募前の確認点」で詳しく整理しています。
働き始めた後に、どのような順番で仕事を覚えていくのかを知りたい場合は、「実務未経験の薬剤師は最初に何を覚える?私が教わった仕事の順番」が参考になります。
収入と続けやすさの両方から働き方を選ぶ
実務未経験や長いブランクがある状態から働き始める場合、収入の大きさに加えて、続けやすさも勤務量を考える材料になります。
週2日・1日4時間から週5日・1日8時間まで、どの勤務量が合うかは、必要な生活費だけでなく、体力、通勤時間、家庭の事情、仕事への不安などによって変わります。
同じ週の実働時間でも、勤務日数と1日あたりの時間によって負担の感じ方は異なります。
長時間勤務に不安がある場合は1日を短くする、通勤回数を抑えたい場合は勤務日数を少なくするなど、自分にとって続けやすい組み合わせを考えることが大切です。
働き方を決めるときは、次の順番で条件を整理できます。
- 生活に必要な額面収入の目安を出す
- 始められそうな勤務日数と勤務時間を考える
- 実際の求人時給で収入を計算し直す
- 社会保険や手取りへの影響を確認する
- 応募条件と教育環境を確認する
勤務日数や勤務時間は、働き始めた後も必ず同じ条件で固定されるとは限りません。
仕事に慣れてから日数を増やす、生活状況に応じて勤務量を見直すといった選択肢もあります。
ただし、後から勤務条件を変更できるかどうかは、勤務先の人員配置や契約内容によって異なります。将来的に勤務量を変える可能性がある場合は、応募前に相談できるか確認しておくと安心です。
次に確認したい内容に応じて、以下の記事も参考にしてください。
- 週3日から週4日へ勤務を増やしたときの収入と負担の変化は、「パート薬剤師の週3勤務と週4勤務。1日の差は思ったより大きかった」で実際の経験を整理しています。
- 収入以外にどのような条件で職場を選ぶか迷っている場合は、「パート薬剤師の職場選び|消耗を減らすために重視した3つの条件」で消耗を減らすために重視した条件を紹介しています。
- パートと派遣のどちらが合うか考えたい場合は、「パート薬剤師と派遣薬剤師の違いを比較|私が直接雇用のパートを選んだ理由」で働き方の違いと、私が直接雇用のパートを選んだ理由を説明しています。
薬剤師免許を収入につなげる方法は、最初から長時間働くことだけではありません。
まずは収入と負担の両方を具体的にし、自分が始められそうな条件から求人を確認していくことも、一つの進め方です。
